インプラント

目次

インプラントとは

下のイラストのように失われた歯を回復する治療です。
従来の方法(ブリッジや入れ歯)に比較して口腔内で長期に機能する優れた治療方法です。
ただし、長期に機能させるにはいくつかポイントがありますので詳しくはこのページで解説致します。

インプラントとは

従来の方法との違い

  1. ブリッジ:支えになる歯を大きく削り、力の負担もかかりますがインプラントにはそれがありません。

    入れ歯:支えの歯への負担や入れ歯特有の違和感や着脱の面倒さなど、入れ歯のデメリットはインプラントにはないものです。


    さらに詳しいご説明をお読みになりたい方

    インプラントのメリット インプラントのデメリット 従来の方法との違い

当院における
インプラント治療の特徴

当院は長期にインプラントを維持、
機能させるための特徴が2つあります。

  1. 当院の診療コンセプトである予防の概念をインプラント治療に応用します。
  2. ストローマン社製のインプラントを用いています。

予防に力を入れる医院の
インプラント治療とは

事故や先天的な歯牙欠損等の不幸な事例を除けば、虫歯や歯周病を防げなかったことがインプラント治療を必要とするほとんどの原因です。歯の健康を維持していく方法論とインプラントを長期に維持する方法論とは基本的に同じですから、予防歯科のノウハウはインプラントの安定に直結すると言えます。インプラント治療後のアフターケアをご自身の歯同様に仕上げていくことでインプラントを含めた口腔内機能を長期に健全に保つように努める体制を整えております。

ストローマン社製の
インプラントを用いる理由

  • 長期に維持されている
    データが示されている
  • 示されたデータの信頼性が高く、
    適切な根拠に基づいている
  • 世界的にシェアが広く、実績もある
  • 日本でも広く用いられている

これらの理由でストローマン社のインプラントは国内外問わず最も信頼のおけるインプラントメーカーの一つだと考えられますので当院で採用し、患者様にご提供しております。

実際の臨床例

症例1 他の歯科医院では
固定性の歯で修復するのは
困難と言われた症例

症例1. 他の歯科医院では固定性の歯で修復するのは困難と言われた症例

長年通った歯科医院で義歯を何度も作製しましたが、どうしても義歯そのものの違和感と取り外しの煩わしさが我慢できず、固定性の修復を望まれて来院された患者さんです。

一見、お口の中をみるとインプラントを埋入するための骨が十分にありそうなのですが、レントゲンを撮影したところ、近医でインプラント治療による固定性の修復が断られた理由がわかりました。

断られた理由は
なんだったのか?
レントゲン診査の結果は?

断られた理由はなんだったのか?レントゲン診査の結果は?

上あごの骨のすぐ上には、副鼻腔のひとつである上顎洞という空洞が広がっています。
歯が失われると、もともと歯があったスペースに上顎洞が肥大化(厳密には含気化)し、同時に顎骨もやせていきます。

さらに、この患者さんのように適合不良な入れ歯や、下顎にも自分の歯が残存しており、噛む力が強いような患者さんの場合、骨はさらに薄くなっていき、最終的に骨の厚みは1~2mmとなってしまったのです。

骨が不足している時の
対処法は?
インプラントはできるのか?

骨が不足している時の対処法は?インプラントはできるのか?

(http://www.health-tourism-martinko.com/sinus-lift.phpより引用)

上顎で骨量が著しく不足している症例でもインプラント治療は可能です。
前述したように健康な上顎洞の内部は空洞になっていますので、上図のように上顎洞底部の粘膜を上方に持ち上げて、できたスペースに骨移植をする(上顎洞底挙上術)ことで、インプラントを埋入するために必要な骨量を確保することができます。

しかしながら、非常に高いテクニックを要する手術であり、インプラント治療の経験が豊かで、かつ解剖学的知識の深い歯科医師のみがおこなえる特殊な手術となります。

上顎洞底挙上術(ラテラルアプローチ) 400,000円 × 2

機能性と審美性と
清掃性を兼ね備えた
固定性の歯の装着

機能性と審美性と清掃性を兼ね備えた固定性の歯の装着

上顎洞底挙上術後、移植した骨ともともとある骨がしっかりとなじむまで6ヶ月程待ちます。

術前に再度CTを撮影し、あらかじめどこにインプラントを埋入するかコンピューター上でシミュレーションをおこない、特殊なテンプレートを用いて、8本のインプラント埋入をおこないました(ガイデッドサージェリー)。静脈内鎮静法を用いて、手術時間は約2時間前後です。

インプラント埋入後、3ヶ月間インプラントと骨が結合するのを待ちます。最終的な被せ物を入れる前に、必ずプロビジョナルレストレーションとよばれる仮歯で、機能性(食べる・話す)や審美性・清掃性の確認と調整をおこない、患者さんの満足が得られたので、その仮歯を模倣し最終的なセミラックの上部構造を作製しました。

長年、総入れ歯で悩んでいた患者さんですが、固定性の歯でなんでも噛めると大変満足していただきました。現在も3ヶ月に1回のメンテナンスには欠かさず来院され、良好な経過を得られています。

S&Aデンタルクリニックの
特徴・強み①

当院では、本症例のように他院では難しいと判断されたインプラント治療も、経験豊かな歯科医師による高い技術により患者さんの負担をなるべく少なく、安心・安全にインプラント治療を行います。
これが「S&Aデンタルクリニック」の特徴です。

症例2 前歯の大きな虫歯が
原因で抜歯が必要になった
症例

チームアプローチによる
審美修復

チームアプローチによる審美修復

この患者様は大きな虫歯により前歯1本が保存不可能な状態でした。ブリッジだと両隣の歯をかなり削ることになります。このためインプラントのご選択を頂きました。
一般的に前歯のインプラントは「骨が薄いこと」や「見た目にかかるところ(審美性)」などから、インプラント治療の中でも非常に難易度が高いエリアだとされています。治療結果を左右するのは、きちんとした診査・診断と治療計画が重要です。

S&Aデンタルクリニックの
チームアプローチイメージ

S&Aデンタルクリニックのチームアプローチイメージ

前歯部のインプラント治療はその審美性がゆえに、難易度が高くほとんどの症例で骨移植が必須となります。その成功にはインプラント治療経験が豊かな歯科医師による高い技術だけではなく、最終的なゴールを見据えそこから逆算した綿密な計画が必要となります。

症例の経過

本症例では、治療後の見た目を可能な限り自然に仕上げるため抜歯の前に部分的な矯正治療を行いインプラント手術前に十分な歯肉組織を獲得することにしました。矯正後は歯肉が増えた状態になっていることが写真からも分かります。

また、治療期間が長期にわたるインプラント治療において、担当衛生士の存在は欠かせません。治療初期における歯周病治療や患者さん自身の日々のブラッシング(セルフケア)はもちろん、ドクターには言えない悩みなどの相談相手として、またモチベーションを維持するために伴走者として、非常に大きな役割を担っているのです。

そして、最終的な歯をつくるのは熟練の技術をもった歯科技工士の腕に委ねられます。歯科技工士の中でも、インプラントや前歯の作製は非常に高い技術が要求される部分で、高い審美性と耐久性という大きな役割を担っています。

合理的なチームアプローチ
による最適な治療結果

合理的なチームアプローチによる最適な治療結果

どれがインプラントかわからないほど自然な仕上がりとなっています。
インプラントの上部構造には「ジルコニアポーセレン」による強度と審美性を備えたクラウンを装着しました。
矯正治療により治療後の自然な調和が得られました。

S&Aデンタルクリニックの
特徴・強み②

一人の歯科医師で全ての治療の専門性を高め、完璧にできる先生はなかなかいません。
歯科医師の技量の限界を患者さんに押し付けるのではなく、理想的な治療ができる専門性の高い歯科医師と歯科衛生士や歯科技工士がチームになり一人の患者様に最適な治療をご提供することが「S&Aデンタルクリニック」の強みです。

症例3 長年、上下の総入れ歯で
悩まれていた患者様

長年、上下の総入れ歯で悩まれていた患者様

この患者様は長年、上下が総入れ歯で悩んでいた方で、もっと美味しく食事を食べたいという主訴で当院を来院されました。

総入れ歯になったら、もうインプラントなんかできないと思っていませんか?
年齢が高齢だからインプラントはできないと思っていませんか?

インプラントで問題になるのは、歯を欠損した数でもなく、高齢でもありません。骨があるかないかです。しかしながら、これはCTを撮影して骨の厚みや高さを知るまでは、わからないのです。

デジタルの進歩により、
安心安全かつ負担が
軽減されたインプラント治療

デジタルの進歩により、安心安全かつ負担が軽減されたインプラント治療

近年デジタルの進歩は目覚ましく、日常生活のみならず、医療現場にも積極的に導入されています。
インプラント治療においては、「デジタルプランニング」や「ガイデッドサージェリー」といった手術時間の短縮や外科的侵襲の軽減を目的とした技術が導入され、患者さんの負担がかなり軽減されるようになってきました。

「デジタルプランニング」とは、術前に撮影したCTを従来のフィルムではなくコンピュータ上で特殊なソフトウェアと融合することにより、「どこに」「どのサイズの」インプラントを埋入するか、事前にシミュレーションすることを言います。
これにより、今までのアナログによる手術に比べ、神経や血管などをあらかじめ正確に把握し、安全にインプラントを埋入することが可能となりました。

「ガイデッドサージェリー」とは、「デジタルプランニング」で計画した位置に正確にインプラントを埋入するために、あらかじめ作られたテンプレートを使用して手術を行う方法です。これにより、手術時間が大幅に短縮されるだけではなく、条件が良ければ歯肉を切開することなくインプラント埋入が(フラップレスサージェリー)可能となり、手術後の痛みが大幅に軽減されるだけでなく、治癒も早いことが大きなメリットです。

デジタルプランニング 全ての症例に適用(手術費用に含まれます。)

ガイデッドサージェリー 10,5000円

歯肉をつけた自然な“歯”

歯肉をつけた自然な“歯”

この患者さんは、非常に骨の条件が良かったため、インプラント埋入後、その日に仮歯をいれ、噛み合わせや発音、見た目などを患者さんと相談しながら調整していきます。

仮歯の期間は、「患者さんが満足いくまで」なので、決められた期間はありません。仮歯で問題がないと満足いただけたら、それを模倣し最終的なセラミックの歯に置き換えていきます。

上部構造 800,000~1200,000円
(材質によって異なります)

S&Aデンタルクリニックの
特徴・強み③

当院では、患者さんが安全かつ安心してインプラント治療を受けていただくために、最新のデジタル機器の導入を積極的に行っています。
インプラント治療を行う歯科医師は、様々なセミナーや学会で講師を務めており、インプラント治療を指導する立場にあります。
最新の設備と最新の知識と技術で、より多くの患者さんにお口の幸せを提供できれば幸いです。

インプラント治療Q&A

1.インプラントすると
どんなメリットがありますか?

まず、初めて歯を失ってしまった患者さんにとって、インプラント治療の最大のメリットは、他の自分の歯に迷惑をかけないことです。歯を失った後の治療法はインプラントの他にブリッジ、入れ歯のいずれかがありますが、どちらも少なからず隣の自分の歯を削ったり、力の負担がかかったりします。(ブリッジの場合:固定式ですがかなり歯を削る必要があります。入れ歯の場合:歯を削るのは少なくて済みますが、取り外し式になり違和感も強くなります。)

一度歯を削ってしまうと元どおりにはなりませんし、その部分から虫歯になることがあります。あるいは、ブリッジや入れ歯でその周囲が磨きにくくなると、歯周病が進行する可能性もあります。
その点、インプラントの場合は前の自分の歯と同じように噛めるだけではなく、ブラッシングしやすくフロスも通すことができ、なおかつ自分の歯を削らないという点が最大のメリットです。自分の歯に迷惑をかけないことで、さらなる歯の喪失を予防することがインプラントのメリットともいえるでしょう。
また、長年、部分入れ歯や総入れ歯などを使用している患者さんにとっては、取り外しをする煩わしさや入れ歯の違和感から解放されるという点が、インプラントの大きなメリットです。インプラントをすることによって、今まで歯ぐきを覆っていた部分を小さくする、あるいは無くことができ、違和感がほとんどなくなります。また、固定性のものにすることも可能ですので、食事のたびに取り外しをする煩わしさや、友人や家族と旅行などに行った際に人前で外したりしないで済むようになります。

更に詳しいご説明へ

2.インプラントの欠点は
なんですか?

インプラントの欠点は主に3つあり、それは外科処置・治療期間・治療費です。
まず、1つめの外科処置ですが、インプラント治療は顎の骨の中にチタンのネジを埋め込み、その上に人工の歯を作る治療ですので、インプラントの埋め込み手術というのを避けて通ることはできません。手術自体は日帰り・局所麻酔(場合によっては鎮静法併用)で行いますので、入院や全身麻酔などは必要無いため比較的に身体的負担は小さいものですが、やはり手術後に痛みや腫れを伴うことあります。そのため、重度の糖尿病や脳血管疾患や心疾患などの病気がある場合は手術ができないこともあります。

次に2つ目のデメリットは、治療期間が他の治療法と比較し長いということが挙げられます。抜歯をしてから歯を抜いた穴の部分がしっかり治癒するまでに、通常2~3ヶ月かかります。それからCT検査などを行い、いよいよインプラントの埋め込み手術を行いますが、手術後再び2~3ヶ月待たなくてはいけません。今度は、インプラントと自分の骨がしっかり結合する(これを「オッセオインテグレーション」と言います)まで時間を置かなければいけないのです。それからようやく仮歯や最終的な歯の部分を作ったりしますので、抜歯からスタートすると最大(骨移植などが必要になるケース)で約1年前後かかる場合があります。毎週のように通院する訳ではありませんが、どうしても待つ時間が必要になるのが、インプラント治療のデメリットのひとつです。

最後に、3つめのデメリットは治療費が高額である点です。保険治療の適用範囲外のため、レントゲンや薬剤などを含む全ての治療において自由診療となり歯科医院によって治療費も異なります。現在では、だいたい1本あたり35~50万円が平均的です。保険範囲内で治療のできるブリッジや入れ歯に比べると高額ではありますが、歯は毎日使うものですし、インプラントが10年間持つとすれば、1日あたりの治療費は100~150円となります。これを高額と感じるかは患者さんの価値観によっても変わってくるでしょう。

更に詳しいご説明へ

3.インプラントを
長持ちさせるためには、
どうすれば良いのですか?

インプラントを長持ちさせるためには、インプラントがどのような理由でダメになってしまうかを知る必要があります。
インプラント自体はチタンでできているネジなので、腐食をおこしたり折れたりすることは滅多にありません。また、当然ですがセラミックの歯が虫歯になることもありません。
しかし、インプラントも歯周病と同じような状態になることがあり、これをインプラント周囲炎と呼びます。インプラント周囲炎とは、インプラント周囲の歯ぐきが炎症を起こし、最終的にインプラントを支えている周りの骨を溶かしてしまう病気です。歯周病やインプラント周囲炎の原因は主に、歯やインプラントの周りに付着するプラーク(細菌のかたまり)で、歯ブラシ(セルフケア)を怠ったり、定期的なメンテナンス(プロケア)を受けなかったりすることで、発症しやすくなります。特に、歯周病が原因で歯を失ってインプラントにした方は、今までの歯ブラシの方法や頻度、あるいは定期メンテナンスの期間を見直す必要があります。インプラントを長持ちさせる最大の秘訣は、インプラントも自分の歯と同じようにしっかりと磨くことと、定期的なメンテナンスを受け、仮にトラブルが起きても早期発見・早期治療を行うことが重要です。

4.骨量が少なくても
インプラントは、できますか?

骨量が少ない状態には、主に2つの要因があります。一つは解剖学的な要因でそれ以上深くインプラントを埋められないケース、もう一つは抜いた後に骨がやせて細くなってインプラントがはみ出してしまうケースです。

結論から言うと、両方のケースとも骨の移植あるいは骨を新たに造成することで、インプラントができないことはありません。近年、生体材料(生体内で使用される人口の材料)の進歩がめざましく、人工の骨あるいは他種骨(ウシなど動物由来の骨)の成績が良くなっています。それに伴い、骨移植あるいは骨造成の適応は広がっており、「インプラントができない」ことは少なくなってきています。ただ、条件によっては、骨移植とインプラント埋入を別に行ったりしなくてはいけませんので、結果的に治療期間が長くなることはあります。

5.上下総入れ歯です。
インプラントするのは、何本必要ですか?
また治療期間はどのくらいかかるものでしょうか?

総入れ歯の状態からインプラント治療を行う場合は、2通りの方法があります。一つはインプラントを用いて入れ歯を維持し、入れ歯を少しでも小さくし安定させる方法と、もう一つは、インプラントで固定性の歯をつくり、違和感のない自分の歯のように噛める方法です。

前者の場合は、上顎で4本、下顎で2本必要になります。治療期間はインプラントの埋め込みをしてから約3~4ヶ月です。

後者の固定性の場合は、上下とも最低6本は必要です。4本で支えられるケースもありますが、万が一インプラントが1本でもだめになってしまった場合にリカバリーをするリスクを考慮した計画です。治療期間は、骨の状態にもより様々ですが、骨が十分な場合でも最低半年はかかり、骨が少なく移植が必要なケースだと1年以上かかるケースもあります。

6.インプラントの代わりになる
治療は、ありますか?

インプラントができない場合の治療法としては、固定式のブリッジと取り外し式の入れ歯があります。
ブリッジは、喪失した歯の前後に自分の歯がなくてはいけませんし、あまり歯がない範囲が大きすぎると支える歯の負担が大きすぎて適用外となることがあります。また、固定式なので違和感などはありませんが、自分の歯を大きく削らなくてはいけないことや、支える歯に負担がかかること、あるいは、ダミーの歯の周りが磨きにくく汚れがつきやすいことがデメリットです。

入れ歯は、ブリッジにくらべると自分の歯を削る部分は少なくて済みますが、残った自分の歯に金属の金具を引っ掛けて入れ歯を安定させますので、場所によっては金属の金具が目立つ場合があります。また、歯ぐきと歯とで入れ歯を支えますから、違和感が強くなりますし、取り外しが煩わしいというデメリットがあります。
しかしながら、どちらも型取りをすれば比較的短期間に作製できますし、健康保険の範囲内で製作することができるので、治療費が安い点はメリットといえるでしょう。

7.インプラントは、
何でも噛めますか?

原則的には、なんでも召しがっていただいて結構です。意図的に、硬いものを強く噛んだりしなければ普段の食事でインプラントが骨から抜けてしまうということはあり得ないでしょう。しかし、歯の部分がセラミックなどでできていますので、あまり硬いものを噛んでしまうと、セラミックが欠けてしまうことがありますので注意が必要です。最近では、ジルコニアという強度に非常に優れたセラミック材料も使用できるようになりましたので、被せ物の材料は担当医が状況にあったものをご案内致します。

8.インプラント治療をしたら、
生活に変化が生まれますか?

お口は、「食べる」だけではなく「話す」や「笑う」といった、人とのコミュニケーションにおいてもとても重要な役割を担います。もし、入れ歯やブリッジを装着していることで、あるいは喪失した歯をそのままにしていることで、「食べる」・「話す」・「笑う」に支障が出ているようでしたら、インプラント治療をすることで劇的に生活に変化が生まれるでしょう。
「食べられなかった」人は、好きなものを思う存分食べられるようになります。「話せなかった」人は入れ歯が外れるのを恐れることなく、自信を持って人前でも喋れるようになります。「笑えなかった」人は人前でにっこり歯を見せて笑うことができるようになります。よく、女性の患者さんで、メークの感じも変わり表情全体が明るくなった方もいらっしゃいます。

9.インプラントは、
どの位もちますか?

データでは、上顎・下顎・前歯・奥歯によっても多少変わりますが、インプラントが10年後に生存している成功率は約95%前後と言われています。インプラントを入れた時の年齢にもよりますので、残念ながら胸を張って「一生持ちます」とは断言できません。
その一番の理由は、インプラントは生体の中に埋め込まれたものなので、その持ち主(患者さん)に、非常に大きく左右されます。患者さんの体は加齢とともに変化しますし、インプラントを入れた後に、インプラントのリスクである糖尿病や骨粗しょう症になる方もいらっしゃいます。中でも、非常に重要なファクターは日々の歯ブラシです。どんなに名医がインプラント治療をしても、患者さんが歯ブラシをしてくれず、メンテナンスに来ていただけなければ、そのインプラントはいずれダメになってしまうでしょう。

10.一度入れたインプラントが駄目になったら、
もう一度インプラントができますか。

インプラントを入れた直後になんらかの理由でインプラントがくっつかず、ダメになってしまった場合は、一度骨の治りを待って再度埋入することにほとんど問題はありません。
しかし、長期使用していたインプラントがダメになってしまった場合は、基本的には再度埋入は可能ですが、非常に条件が悪いことが多いので骨移植などが必要なケースがほとんどです。条件が悪いというのは、最初に歯を抜いた時点で骨がやせており、その後インプラントがダメになるということは、さらに骨がやせていることが多いからです。下顎などは顎の中を走行する神経や血管に近接してしまうことが多いので、比較的大掛かりな骨の移植が必要になることがあります。

11.骨に悪い影響は、
出ませんか?

インプラントの骨への影響は、インプラントの材料によって違います。
これまで、インプラントには様々な材料が用いられてきましたが、その材料と骨との結合様式によって3つに分けることができます。

その材料と骨との結合様式

現在では用いられていませんが、コバルトクロム合金やステンレス鋼を用いた骨膜下インプラントなどでは、材料と顎骨の間に線維組織が介在する介在性骨結合と呼ばれ、これらの材料は生体内許容性と言われています。
材料と顎骨の間に線維組織が介在すると、噛むたびにその組織が押され痛みが生じることがあり、結果的に骨に炎症を起こすことがありました。
現在用いられるチタンやチタンにアパタイトコーティングを施したインプラントは、それぞれ「生体不活性材料(チタンやジルコニア)による線維組織が介在しない直接性骨結合」、「生体活性(ハイドロキシアパタイトやリン酸カルシウム)による化学的結合」といわれています。
大部分のインプラントはチタン製でいわゆる「生体内不活性」や「生体内安定材料」とも呼ばれるように、骨に対して全く活性がなく骨と材料の間にも線維組織が介在しないので噛んでも痛みは起こりません。また、日本特有とも言えるハイドロキシアパタイトコーティングのインプラントの場合、骨と化学的に結合していますので、チタンよりも早期に結合すると言われています。しかしながら、長期的にその結合がどのような動態になるかはまだ議論の余地が残るところです。
現段階で言えることは、チタン製のインプラントであれば、長期的にみても生体内で悪影響を及ぼすことはまずないでしょう。

12.かみ合わせに影響が
出たりしますか?心配です。

歯の欠損を放置すると、隣合う歯がその欠損したスペースに倒れこんだり、あるいは噛む相手がいなくなった向かいの歯が伸びてきたりして、噛み合わせに支障をきたします。
本来、インプラント治療は歯が欠損した部分を補い、噛み合わせを正しく、あるいはその不正を予防する治療ですので、インプラントをすることで噛み合わせがおかしくなるということは原則的にはないでしょう。しかし、もともと顎関節症や噛み合わせの違和感(咬合違和感症候群)などがある患者さんへのインプラント治療は慎重に行うべきです。インプラント治療を行う前に、あらかじめそのような問題を解決しないまま、インプラント治療を行ってしまうと、顎関節症が悪化したり、本来感覚のないはずのインプラント部分に違和感を覚えたりすることがあります。
また、長期的な視点で見てみると、天然の歯は時間とともに少しずつ磨耗しすり減っていきますが、インプラントの被せ物(上部構造)の材質によっては磨耗しにくい材料(ジルコニアなど)もあり、噛み合わせに微妙なずれが生じることがあります。それを防ぐためにも、定期的なメンテナンスを受け、歯科医師による噛み合わせのチェックが必須となります。

13.インプラント埋入後、
アレルギーなど体に悪影響は、
ありませんか?
(メリットデメリット教えてください)

(11の質問でお答えしたように)現在、インプラントに用いられているチタンという材料は生体内不活性と言われており、体に悪影響を及ぼすことはありません。
また、チタンによる金属アレルギーについてですが、全くないということはありません。非常に少ない頻度ですが、ごく稀にチタンによる金属アレルギーの報告があります。万が一そのようなアレルギー症状が出てしまった場合は、残念ながらインプラントを撤去しなくてはいけません。また、インプラントの上部構造に用いられるパーツにニッケルやクロムなど金属アレルギーをおこしやすい金属とチタンの合金が用いられることがあります。金属アレルギーは、金属がイオン化(溶け出して)起こるものですので、お口の中に露出している部分でなければ症状が出ることは少ないのですが、上部構造を装着した後にアレルギー症状がでた場合は、インプラント自体を撤去しなくても上部構造の材質を変えることで改善することもあるでしょう。
チタンアレルギーと判断された患者さんの多くは、他の金属に対してもアレルギーを持っていることが多いようです。心配な方は、事前にパッチテストとよばれる金属アレルギーの検査を受けることをお勧めします。

14.インプラントは入れた後、
そのままで大丈夫でしょうか?
ケアしないと抜けますか?

インプラントでしっかりと噛めるようになって、なにも問題がなければもう二度と受診しなくて良いということはありません。
インプラントは、歯を抜いてから歯茎が少し下がったところから、歯が立ち上がりますので自分の歯よりも磨きにくくなっています。そのため、患者さん自身による日々のブラッシングや歯間ブラシといったセルフケアが非常に重要になってきます。
さらに、2~3ヶ月に一度に定期的に手術をおこなった歯科医院で衛生士による超音波ブラシなどによるプロフェッショナルケアや噛み合わせのチェックなどをおこない、何か問題起きていても早期発見することが非常に重要です。ケアを怠り、インプラントに痛みや強い腫れが起きた時には、すでに大きな問題が起きている可能性が高く、結果的にインプラントを抜かなくてはいけない場合もあります。
また、近年ではインプラントに保証制度を導入している歯科医院がありますが、保証の前提として定期メンテナンスは当院も含め必須事項となっています。

15.インプラントをしていたら
歯周病になりませんか?

インプラントは完全に人工物でできているのでむし歯になることはありませんが、歯周病のようにインプラントの周りの組織に炎症が起こり、インプラントを支えている骨が溶けてしまうことがあります。
厳密にはその進行状況に応じて、「インプラント周囲粘膜炎」と「インプラント周囲炎」に大別され、これらを総称して「インプラント粘膜周囲疾患」と言います。「インプラント周囲粘膜炎」と「インプラント周囲炎」の違いを表に示します。

インプラント周囲疾患

どちらも、14の回答にあるように、セルフケアとプロケアによる予防が非常に重要になってきます。

16.インプラント治療後に他の歯が悪くなったら、
治療しなおさなければならないのですか?

インプラント治療のデメリットとして、①費用がかかる ②時間がかかる ③手術が必要 の3つが挙げられます。したがって、一度治療が完了したのに、また治療や抜歯が必要になってしまったら、また1からやり直さなくてはいけません。患者さんにとっては、またお金も時間もかかるというのは大きな負担です。ですから、そういうことがないように、あらかじめ、ある程度の予知(予見)性を持って治療計画を立てることが非常に重要です。すなわち、いま歯がないところだけを“とりあえず”インプラントにするのではなく、近い将来に抜歯になる可能性がある歯は、あらかじめ抜歯して、そこも同時にインプラント治療を行うなど、お口の中全体を見通した判断が歯科医師に求められます。
中でも歯周病はインプラント治療を開始する前に必ず治療やコントロールが必要となります。また、むし歯や適合の悪い被せ物などはインプラント埋入後の治癒期間中(骨と結合するまでに待っている時間)に、治療を行うことが重要です。

17.治療費はどれくらいかかりますか?

インプラントの治療費は、自由診療のためクリニックによって大きく異なります。治療の内容別に費用を大きく分けると次のようになります。

① インプラントの術前検査代(CT撮影代含む)
② インプラント埋入手術代(多くが「1本あたりの値段 x 本数」、使用メーカーによってバリエーションがあることもある)
③ 骨移植・骨造成代(必要ない場合あり・骨移植材料を別途請求する場合あり)
④ アバットメント代(インプラントと上部構造をつなぐ中間構造体)
⑤ 上部構造代(材質によってバリエーションあり、アバットメント込みの場合あり)
当院はここまでで1本約40万円です。
一括は分割などお支払いの方法は患者様のご要望に合わせます。
⑥ メンテナンス代

通常は①~⑤までをインプラントの治療費として見積もりを出してくれる医院がほとんどだと思いますが、②だけが大きく取り上げられている例も散見しますので、よく話を聞いて何がどの費用かを患者さん自身も理解する必要があるでしょう。

18.インプラント治療の分割払いは可能でしょうか?
また、ローンなども可能でしょうか?

可能です。最終的なセット物が入るまでの間であれば回数、期間などご相談の上なるべくご無理のないようなお支払いスケジュールをお受け致します。また、デンタルローンのご利用でさらに細かく分割していただくことも可能です。

19.他の医院を見ると5万円というインプラントがありますが、
値段の違いがわかりません。
平均価格とかあるのでしょうか?

インプラント治療は自由診療なので、医院によって値段は変わります。
インプラント治療にかかる治療費の内訳は、大きく分けて、「術前検査(CTなど)代」・「インプラント埋め込みの手術代」・「上部構造(歯の被せ物の部分)代」に分けられます。しかし、医院によっては、上の3つを合わせた総額ではなく、インプラントの手術代のみの金額や、場合によってはインプラント自体の材料代のみの金額を表示している医院もあるようです。実際に、すべての治療の総額が「5万円」ということは現実的にはあり得ません。
インプラント治療が高額な理由は様々あり、次のようなことが挙げられます。

  • インプラント体(埋め込むネジの部分)やアバットメント(被せ物をつなぐパーツ)や
    上部構造(セラミックなどの被せ物)など、材料代や技工代が高額
  • 衛生的かつ安心・安全に手術をするために、
    手術時の材料が使い捨て(ディスポーザブル)のものが多い
  • 型取りなどで、一般の歯科治療ではあまり使用しない高額な材料を使用する

つまり、インプラントの治療費が安いということは、上記のどれかを削減している可能性があります。
インプラント自体の値段もメーカーによって多少異なりますが、生体の中に埋め込んで機能するものですから、信頼されたブランドであることが大切です。また、外科処置においては、術後の感染のリスクできるだけ減らすべく、衛生的な環境は必須といえるでしょう。最終的な上部構造も口腔内で長く機能するためには精密かつ強度の高い材料が望ましいと言えます。それらを突き詰めていくと、どんなに安く見積もっても治療費の総額は30万円を超えてくるのが一般的です。

インプラント治療を受ける際には、最終的な被せ物まで含めた総額お見積もりを出してもらうことをお勧めします。当院では、治療を開始する前に必ず見積もりをご提示し、患者さんの同意が得られた上で治療が開始されます。全体の総額を把握せずに治療が開始することは、後々のトラブルにつながりかねませんので、十分な説明と同意(インフォームドコンセント)の上で治療を受けることが重要です。

20.インプラントの平均的な
治療期間・通院回数を教えて下さい。

欠損している歯の部位や本数、あるいは埋入する予定の骨の状態によっても治療期間や回数は大きく変わります。すでに抜歯した状態で、全身的にも局所的にも問題がなく、奥歯1本を失った時の最もシンプルな症例の流れを下図に示します。

インプラント治療の流れ

このようなケースでは、最短で約2ヶ月の治療期間、約5回の通院で最終上部構造が装着され、治療が完了します。
しかし実際には、抜歯をするところから治療が開始となることが多く、抜歯してから検査をするまでに1~3ヶ月(部位によって異なる)抜いた部分の骨の治癒を待たなくてはいけません。また、いざ検査をしたところ、インプラントをするための骨が不十分で、インプラントに先立ち骨移植などの前処置が必要となることもあります。最も大きな骨移植処置(ブロック骨移植やラテラルアプローチのサイナスリフト)で骨移植術後最大6ヶ月、待たなくてはいけません。また、前歯などの審美的に関わる部分や、多数歯欠損のように咬み合わせの調整が必要な症例では最終的な被せ物の前に仮歯(プロビジョナルレストレーション)を入れて、見た目や咬み合わせの調整で数ヶ月要することもあります。
治療期間や回数は、その症例によって大きな幅がありますので、担当医が事前に詳しくご説明致します。

21.インプラントの手術後
どのくらいのペースで
通院する必要がありますか?
治療費も教えて下さい

インプラントの手術後は、まず、手術部位が治癒するまでの期間が非常に重要です。術後は指示された通りに、抗生剤や鎮痛剤を飲んでいただければ、毎日のように消毒に来る必要はありません。当院では、全身的に感染のリスクが低い患者さんであれば、手術後10日~2週間の間に抜糸と消毒に来てもらい、問題がなければそのあとは型取りまで来院する必要はありません。しかし、感染のリスクや比較的大きな骨移植などの処置をおこなった場合は、頻繁に消毒に来ていただくこともあります。
費用は手術から手術後の消毒、型取り、装着、一連の費用で1本約40万円です。
消毒や型取りで別途費用は発生しません。

インプラント手術後の流れ

※()内は症例によっておこなう場合とおこなわない場合があります

  1. 術後の消毒(手術翌日、3日後、1週間後 患者さんのリスクによって頻度は変わります。)
  2. 手術部位の抜糸(術後10日から2週間の間)
  3. (2次手術)
    ※必要な患者さんのみおこないます。
  4. (仮歯の型取り)
  5. (仮歯の装着)
  6. (仮歯の調整)※数回かかることあり
  7. 最終上部構造の型取り
  8. (最終上部構造の試適や噛み合わせ)
  9. 最終上部構造の装着
  10. メンテナンスへ移行

22.被せ物・上部構造が
壊れる可能性はありますか?

インプラントの上部構造が壊れる可能性はあります。
インプラントの治療後の合併症(起こりうるトラブル)の中でも、最も多いのが、上部構造の破折とインプラント周囲炎であると報告されています。上部構造にセラミック材料を用いた場合に特に多く、被せ物の一部がお茶碗の縁のように欠けてしまうといったことは比較的よくあることです。
最近では、色も白く強度も高いジルコニアという材料が応用されるようになり、そういったトラブルは減少しましたが、上部構造は毎日口腔内という過酷な環境の中で機能しているため、経年劣化は免れません。しかしながら、もし仮に上部構造が壊れてしまっても、土台の部分のインプラントに問題なければ、再度上部構造の作り直しや修理で対応することも可能です。最近では、上部構造のそういったトラブルに関して、保証制度を設けている医院も少なくありません。事前に医院に確認すると良いでしょう。当院も症例に応じた保証を設けております。

23.インプラント相談、カウンセリングは有料でしょうか?
どのくらいのお時間お話できますか?

当院では治療の御相談でいらっしゃった患者さんに対して、まずは保険の範囲で行える診査を行いますのでその費用がかかります。
状況によりますが、概ね3,000円程度です。
相談の時間は平均的に1時間くらいです。
インプラントに関する一般的な説明はもちろん、その場で患者さんのお口の中の状況に応じたコンサルタントをおこなっています。また、他の歯科医院で相談している患者さんでも気軽にご相談できるセカンドオピニオンとしても、相談を受け付けております。いろいろな医院で治療についての話を受けるのは、患者さんの権利の一つでもあります。積極的にセカンドオピニオンとしてもご利用いただければ幸いです。

24.喫煙者ですがインプラント治療は可能でしょうか?

喫煙者でもインプラント治療は可能ですが、リスクを伴います。
リスクとは、具体的に『手術後のリスク』と『メンテナンス時のリスク』に分けられます。そもそも、喫煙が口腔内に与える一番の悪影響は「血流を悪くする」ということです。具体的には、ニコチンなどの有害物質の薬理作用により、口腔内の歯ぐきなどの歯周組織に対して「毛細血管の収縮」が起こります。
続いて、「血行障害」が起こり最終的に局所的な「酸素分圧が低下」し、「免疫機能が低下」が引き起こされます。つまり、インプラント治療においては、「手術部位の治癒が悪くなるということ」と「長期的にみて、非喫煙者と比べ、インプラント周囲炎のリスクが高いこと」が挙げられます。
データではどちらも非喫煙者の2倍以上のリスクがあると言われています。できれば、インプラント治療を機に禁煙することが望ましいですが、禁煙が難しい場合はインプラント埋入手術後2週間くらい(手術部位の歯ぐきの治癒が完了するまで)はできるだけ本数を減らした方が良いでしょう。また、最終上部構造が入り治療が完了した後も、喫煙者の場合はインプラント周囲の歯ぐきになにかトラブルが起きても自覚症状が出ることが少ないため、定期的にメンテナンスを受けることが重要になってきます。喫煙本数が多い場合はインプラント治療をお断りする場合もございます。

25.ほとんどの歯が抜けそう・抜けてしまった状態です・・・
インプラントできますか?治療法を教えて下さい。

歯が1本もない状態を「無歯顎」といいますが、この状態やそれに近い状態でもインプラント治療によって噛み合わせの回復を行うことが可能です。そもそも、近代インプラント治療の原点は、この無歯顎の患者さんに対して、数本のインプラントを埋入し固定性の上部構造で数十年機能したことに始まります。

現在では、「無歯顎」の患者さんに対して2つの方法があります。
一つは、前述のように数本のインプラントを埋入し、固定性の上部構造で噛めるようにする方法と、もう一つは総入れ歯の支えとして2~4本のインプラントを埋入し、入れ歯の安定を図る方法です。前者は、上顎なら6本以上、下顎なら4本以上のインプラント埋入し、患者さん自身は取り外しのできない(歯科医師は上部構造の破折などのトラブルが起きた場合のために、取り外しができる仕組みになっています)固定性の上部構造を装着する方法です。自分の歯のように違和感なく噛めるのが最大のメリットですが、取り外しができないためセルフケアによる清掃が困難な点があるため、メンテナンスがより一層重要となります。また、インプラントの本数が多いため、治療費も高額になることがデメリットの一つと言えるでしょう。

一方、後者の入れ歯の支えとしてのインプラント治療は「インプラントオーバーデンチャー」と呼ばれ、長年総義歯が安定せずに悩んでいた患者さんには画期的な治療法です。
欧米では、特に安定させるのが難しいと言われている下顎の無歯顎の患者さんには、インプラントを2本埋入しインプラント安定させる治療が第一選択であるとまで言われています。
上顎は4本、下顎は2本埋入するのが一般的で、インプラントの上部にはアタッチメントと呼ばれる義歯を安定させるための器具を装着します。
アタッチメントには様々な種類があり、ボタンのようにパチっとはめる「ロケーター」や、磁力で安定させる「磁性アタッチメント」、バーでインプラント同士を連結させる「バーアタッチメント」などがあります。「オーバーデンチャー」の最大の利点は、義歯の安定ですが、その他に「義歯を小さくする」というのも大きな利点です。特に、上顎では口蓋(上顎の凹んでいる部分)を覆わなくて済むようになり、発音の向上や熱を感じるようになるので味覚も大きく向上します。
いずれにしても、歯がないからインプラント治療ができないということはなく、むしろ歯が1本もない患者さんに対して、インプラント治療は大きな効果を発揮します。ぜひ、長年総入れ歯などでお悩みの方は一度ご相談ください。

26.インプラントに
適している場合と
適さない場合はありますか?

インプラント治療が適応には全身的な問題と局所的な問題あります。
まず、全身的な問題で適さない場合には以下のような場合があります。

  • コントロールされていない糖尿病や
    高血圧・骨粗しょう症
  • 心筋梗塞などの発作から6ヶ月以内
  • 精神疾患

上記の患者さんに関しては、絶対的に禁忌となります。しかしながら、1・2に関しては医師による診察を受けていただき、許可が出れば問題なく行えることがほとんどです。

一方で、局所的な問題には骨量の不足や、対合歯との距離が不足して場合などが挙げられますが、近年では骨移植術や骨補填材の進歩により適応は拡大しています。それらを診査するためにはCT撮影や模型診査・口腔内写真などが必須となります。

しっかりとした術前診査を行い、その上でいくつかの治療方針を提示してもらい、最終的にはリスクとメリットを考慮し、患者さんご自身で選択することが重要となります。

インプラント治療の
メリット

インプラント治療には次のようなメリットが挙げられます。

  1. 他の自分の歯を守る
  2. 自分の歯のように違和感がない
  3. 取り外しなどの煩わしさがない
  4. 見た目が良い

1.他の自分の歯を守る

インプラント治療の最大のメリットは「他の自分は守る」という点です。歯を失った際の治療法にはインプラントの他にブリッジや入れ歯がありますが、どちらも健康な自分の歯を削ったり、力学的な負担をかけたりしなくてはいけません。

天然の歯は、一番外側がエナメル質という非常に硬い組織で覆われていますが、一度歯を削ってしまうとその下にある象牙質が露出してしまいます。
象牙質はエナメル質と比べると、柔らかく虫歯になりやすいため、健康な歯を削るということは新たな虫歯をつくるきっかけを作る事に他なりません。
また、神経が生きている歯を削るとその部分に痛みがでたり、しみたりすることがあります。痛みやしみる症状が改善しない場合は、最終的に神経を抜かなくてはいけないこともあります。
神経を取ってしまうと、歯自体に血流がなくなってしまうので、もろくなり歯根の破折などのリスクが高まりますので、抜歯へのカウントダウンが近づいてきます。
また、ブリッジも入れ歯も抜歯した部分の噛み合わせの力の負担を、他の歯(主に隣の歯)で補わなくてはいけません。例えば、奥から2番目の歯を抜いてしまった場合、ブリッジの場合も入れ歯の場合も、1番奥と抜いた歯の手前の歯の2本で、3本分の歯にかる負担を支えなくてはいけません。奥歯ではかなりの負担がかかりますから、その支えている歯がもし、神経を取っている歯(失活歯)であれば、歯根の破折のリスクは一層高まります。

一方、インプラントは他の歯を削ったり、他の歯に力学的な負担をかけたりせず、インプラント単独で機能するので、新たな虫歯や歯根の破折などのきっかけを作ることはありません。つまり、インプラントによって、歯の欠損を補うだけではなく、他の自分の歯も守るというのが、インプラント治療の最大のメリットです。

2.自分の歯のように
違和感がない

入れ歯を使っていた人が、インプラント治療を希望する一番の理由は、「入れ歯の違和感」だと言われています。
入れ歯は、安定させるために歯にクラスプと呼ばれる金具をかけたり、歯肉の部分でも支えを得るため床と呼ばれるピンク色の部分で歯ぐきを覆ったりしなければいけません。さらに、歯の欠損部分が大きくなると、下顎の場合、下の前歯の裏側を金属のバーで橋渡しをしたり、上顎の場合、口蓋と呼ばれる歯の内側のくぼみ部分を覆ったりしなくてはなりません。
どちらも、発音や咀嚼時に非常に違和感があり、場合によっては食べ物の温度や味を感じにくくなることもあります。

インプラントは人工の歯根を骨に埋め込み、それを支柱として歯をかぶせる治療ですので、他の歯に金具をかけたり、歯ぐきに咬合力の負担をかけたりする必要がありません。
歯を抜いて、骨が少し痩せたところから歯が生えるような感じになるので、若干自分の歯とは違う感じがある場合もありますが、入れ歯のような異物がお口の中に入っている感覚は全くないのが、インプラント治療のメリット言えるでしょう。

3.取り外しなどの
煩わしさがない

インプラントは、取り外し式の入れ歯と異なり、原則的に固定式の治療法です。(総入れ歯を安定させるためにインプラントを入れることもあります。)入れ歯の場合は、食事のたびに入れ歯の周囲に食べ物がはさまったりするので、食後にはずして洗浄したり、就寝時には外したりと、1日に何度か着脱をしなければいけません。わずらわしいだけではなく、友人と旅行などに行った際に人前で外すのが恥ずかしいとおっしゃる患者さんもいらっしゃいます。

一方、インプラントによって修復された歯はセメント固定またはねじ止め(スクリュー固定)されているので、患者さん自身がはずすことはできませんので、食後もご自身の歯と同じように歯ブラシをするだけで問題なく、入れ歯のような煩わしさがないのもメリットと言えるでしょう。
ちなみに、何かトラブルがあった際に対応できるように、歯科医師は外せるような仕組みになっています。

4.見た目が良い

インプラント治療は保険外の治療なので、最終的な歯の部分の被せ物(上部構造)も保険外の材料で製作されます。前歯部では、技工士さんが陶材を築盛し、より天然の歯に近い色調に仕上げてくれます。
しかし、この陶材は奥歯など力がかかる部分に適用すると、一部が欠けてしまうことがよくありました。そのため、少し前までは噛み合わせの面だけ金属にしたりすることがありましたが、現在はジルコニアという白くかつ強度にも優れるという特徴の新しい材料の開発が進み、インプラントの被せ物に応用されるようになってきました。ブリッジの場合は健康保険適用の範囲内で行うと、犬歯よりうしろの歯すべて銀歯になってしまいます。
また、入れ歯の場合は仕方なく前歯の方に金属の金具(クラスプ)をひっかけざるを得ないことがあり、にっこり笑ったときなどに金属目立ってしまうために、大きなお口を開けて笑えないと悩まれていた患者さんもいらっしゃいました。

ただし、前歯などでは保険外のブリッジ方が審美的には優れることもありますので、担当医とよく相談の上でインプラント治療を決めることをお勧めいたします。

インプラント治療の
デメリット

インプラント治療は、ブリッジや入れ歯のような他の治療と比べて、「自分の歯を守る」という点では大きなメリットがありますが、デメリットも幾つかあります。それは以下の3つが挙げられます。

  1. 治療期間が長いこと
  2. 外科的な処置およびリスクがあること
  3. 治療費が保険適用外のため高額であること

以下にそれぞれにデメリットについて説明していきます。

1.治療期間が長い

歯を抜いた直後は骨に穴があいた状態になっています。ブリッジや入れ歯のような従来の方法では、ある程度歯を抜いた穴の部分がふさがってきた時点で、型取り(印象)をし、その後は2~3回で完成し、治療は終了となります。
一方で、インプラント治療は骨の中に人工の歯根を埋め込む治療ですので、抜いた骨の穴の部分がしっかり治癒するのを待たなくてはいけません。治療する部位にもよりますが、通常は約3ヶ月程度待ってから、CTで骨の状態を確認していきます。

CTで十分な骨の治癒が確認されたら、いよいよインプラントを埋め込む手術を行いますが、残念ながら埋め込んだ直後から噛めるようになるわけではありません。骨とインプラントがしっかりと結合する(これをオッセオインテグレーションとよびます)までに約2~3ヶ月ほどかかり、骨と結合が確認されてからようやく仮歯で噛めるようになります。
近年では、抜歯してすぐにインプラント埋入する方法(抜歯即時埋入)やインプラントを埋めた直後に仮歯をかぶせる方法(即時負荷・即時修復)も良好な成績が報告されていますが、すべての症例に適応できるわけではなく、非常に条件が良い患者さんのみに適応が可能です。

結果的に、抜歯を治療のスタートとすると、噛めるようになるまでは約半年程度かかることになります。
欠損部分(歯がない部分)が大きい場合や前歯などの見た目が重要な部位では、その後仮歯で形態やかみ合わせなどを調整する必要がありますので、さらに数ヶ月かかることもあります。このように、毎週のように歯科医院に通うわけではありませんが、トータルの治療期間が長いというのがインプラント治療の1つ目のデメリットといえるでしょう。

2.外科的な処理および
リスクがあること

先に述べたように、ブリッジや入れ歯のような従来の方法では、歯を削って型取りをすれば、あとはそのブリッジや入れ歯の完成を待つだけです。一方で、インプラントは骨に埋め込むための手術をしなくてはいけません。

手術自体は入院の必要もありませんし、長くても2時間程度の手術なので、医科の手術に比べると比較的軽い手術ではありますが、どうしても術後は痛みや腫れが伴うことが多くあります。痛みに関しては、通常、術後に処方する鎮痛剤で緩和されることがほとんどですが、術後の顔の腫れを防ぐことは困難です。当然、どちらも個人差はありますが、術後5~7日は人前に出たりする仕事や旅行などの遠出は控えた方が良いでしょう。
また、インプラントを埋め込むための十分な骨が不足している場合は、それに伴う解剖学的なリスクが生じてきます。

例えば、下顎の奥歯へインプラントを埋め込む場合、顎の骨の中を下歯槽神経という下唇の周囲の知覚を支配する神経が走行しており、万が一インプラントを入れる穴を掘るためのドリルなどで、その神経を損傷してしまうと、下唇から顎の先(オトガイといいます)にかけて、知覚麻痺(麻酔がずっと効いているような状態)が起こる可能性があります。程度によっては薬剤療法などで回復することもありますが、大きく損傷してしまう(神経の切断)と元通りになることは難しく、長く後遺症として残る場合もあります。
事実、インプラント治療を巡る医療訴訟で最も多いのはこの「術後の知覚の麻痺」といわれています。その多くが、神経までの距離を正確に測定するためのレントゲンであるCTを撮影せずに、インプラントの埋め込みの手術を行っていたともいわれています。

また、上顎の奥歯も骨が薄く、上顎洞という副鼻空の一部(蓄のう症などで膿がたまる空洞)が存在します。下顎と違って、神経があるわけではありませんが、その空洞にインプラントが突き抜けてしまうと、問題が起こります。上顎洞という空洞は鼻の穴とつながっているため、体の内部というよりは、外部と同じ環境であり決して清潔な場所ではありません。そこに、インプラントが突き出た状態になっているといずれ、上顎洞の中で感染や炎症を起こす可能性があります。
当院では、そのような事故を未然に防ぐためにCTを常設しており、場合によっては手術中に撮影することも可能です。また、複数の歯科医師による確認後に手術計画を立て、正確な位置へ埋入するようコンピューターシミュレーションを行い、手術用のガイドテンプレートを用いて手術を行うことで、そのような事故を未然に防ぐよう注意を払っています。

また、術後の感染を防ぐためにもできるだけ使い捨て(ディスポーザル)の器具や材料を使用しています。
外科的な処置はインプラントの埋め込みだけではなく、十分な骨量が不足している場合は、骨を増やす処置(骨造成)が必要となります。骨造成には様々な方法がありますが、骨の残存量によってインプラントの埋め込みと同時におこなうこと場合と、骨造成とインプラントの埋め込みを分けておこなう場合があり、後者の場合、手術回数が増えるため患者さんの負担も大きくなります。
そのため、心筋梗塞の既往や重度の糖尿病を患っている患者さんなどは、医師から手術の許可が得られず、インプラント治療を受けられない場合もあります。
このように、インプラント治療では、他の治療法にはない外科的な処置が必要となるのが2つ目のデメリットといえるでしょう。

3.治療費が保険適用外のため
高額であること

ブリッジや入れ歯による治療は、健康保険の適用範囲内でも自由診療でもどちらの治療も受けられます。
両者の最大の違いは、使用している材質の強度や適合精度あるいは見た目が異なり、患者さんの希望によって選択していただくことが可能です。しかし、残念ながらインプラント治療は保険適用ではなく、インプラント治療に関わる全ての検査(レントゲン)や術後の薬剤までもが保険の適用外となります。以前、ある病院でインプラントのためのCT検査を保険適用で撮影し大きな問題となりました。健康保険で認められていない治療を受ける一個人の治療費用の一部を国民の血税でまかなうことは許されないのです。

インプラント治療が高額である理由は、治療を安心・安全におこなうためにかかる設備投資が大きいことと、治療過程における消耗品が非常に多くかつ高額であることに由来します。
決して、歯科医院が利益をあげるために法外な治療費を提示しているわけではありません。
自由診療ですので、医院によっては治療費に大きく差が見られることもあります。これは、使用しているインプラントメーカーにより価格が異なるため、差が出ることもありますし、清潔な環境への投資をどれだけ行っているかにもよって異なる場合もあります。また、医院によっては埋め込みの手術代と上部構造代を分けているところもあります。

当院では、一生体内で使用されるインプラントですから、できるだけ感染など術後のトラブルが起こらないよう大学病院と同じレベルの滅菌環境にて行っており、安心・安全なインプラント治療を心掛けています。